最初の本格的な華北の経済調査
富澤芳亜
今回、配本の各冊には、支那駐屯軍司令部乙嘱託班による華北の諸鉱山の調査と、南満洲鉄道株式会社調査部による「支那・立案調査書類」の中から鉱山関係書類を収録した。日中戦争勃発後の華北占領地における「経済開発」のブレーンとなったのは、満鉄北支事務所調査局だった。日本が華北占領地においてもっとも重視した資源は鉄鉱石と石炭であり、くわえて当時の国際収支の悪化から金鉱開発も重視された。そして満鉄自体にとって、華北の諸鉱山の開発は日中戦争以前からの悲願でもあった。
乙嘱託班調査は、日中戦争直前に満鉄が支那駐屯軍の依頼を受けて華北の各鉱産地で行った大規模な実地調査である。そして「支那・立案調査書類」は、1937年夏に開催の計画された「大陸経済会議」の準備のために満鉄により作成された。この会議は、日中戦争勃発により中止となったが、その目的は華北を円ブロックに包括する準備にあった。すなわち今回配本の各冊から、日中戦争直前における経済調査の目的と実態が明らかになろう。