不可欠の公共事業、公共政策を連続的に捉えようとする視点
貴志俊彦
第4回配本は、戦前の在華調査機関による都市インフラ調査のうち、とくに満鉄経済調査会が発行した立案調査書類および興亜院華中連絡部が発行した興亜華中資料をとりあげている。1906年成立の満鉄は満洲・蒙疆・華北で詳細な調査を進め、さらに38年成立の興亜院は華南、西南地域を含めた中国全土で概括的な調査をおこなった。これらの調査報告は、戦時下日本の政策課題を検証するだけでなく、1930年代以前の中国のインフラ問題を検証しようとしている点に特徴がある。
20世紀初頭から始まった都市インフラの整備は、都市の近代化、産業開発、住環境の改善などを試みるうえで不可欠の公共事業であり、清代から中華民国時期、戦時下日本の統治策などの公共政策を連続的に捉えようとする視点はいまでも重要である。こうした調査の総合的検証によって、満鉄から興亜院、そして大東亜省という在華調査活動の継承関係も明らかにされると期待できる。