広範囲かつ大規模に行われた中国調査
加藤聖文
第5回配本となる本シリーズ「占領地の統治と支配」では、占領地統治の基礎資料として作成された調査報告書を掲載した。
これらは中国における行政機能から始まって、思想や宗教、民族問題にいたる実態調査、国民党・共産党やソ連の政治分析にいたるまで政治面での幅広いジャンルを網羅しており、日中戦争期に日本が行った中国調査がいかに広範囲かつ大規模に行われたものであるかを窺い知ることができる。また、このような調査は、満鉄上海事務所や興亜院が中心となって行われたが、在華調査機関の連携の一面が窺えると同時に、調査の中心となった興亜院には、中国問題専門家ばかりではなく、実にさまざまな経歴を持った日本人が関与していたことも知ることができる。
また、これからの研究は、当時日本によって行われた中国調査がどこまで正確に実態を把握できていたのかを実証的に再検証する必要があるが、本シリーズ掲載の資料はそのレベルを測る上でも参考となるものといえよう。